今回の尖閣列島海域での中国漁船拿捕事件で、中国がこれだけ強気に出ている背景は何か?巷間に言われているように、尖閣列島の領有権を主張するためだとか、海底に眠る石油資源の確保だとか、魚魚資源の囲い込みだとか、中国の国内問題から国民の目を逸らすためだとか、その何れもがきっかけではあるが直接の原因ではない。
では何がここまで中国を興奮させて要求をエスカレートさせているかと言うと、中国政府なかんずく軍部は戦争がしたくしたくてうずうずしている、言わば“戦争をやりたくてやりたくて仕方がない症候群”に陥っているのだ。“戦争への禁断症状”が出始めていると言っていい。
軍事力と言うのは麻薬のようなもので、一旦それに手を染めてしまうとそれをどうしても使いたくなってくるものだ。この20年間、中国は年率20%以上の伸びを示した国防予算で着々と軍事力を近代化してきた。止めども無く拡大してきた軍備が一体どれほどの「実力」を持っているのか、中国は単なる演習や訓練ではなく実戦で試したくて仕方が無いのだ。
60年前の朝鮮戦争ののち、中国は旧ソ連との国境紛争、文革直後の対ベトナム戦争の二つしか経験していない。しかもその時の軍備は今から思えば第二次大戦時とほとんど変らない人海戦術を基本とした旧式軍備だ。それら以外でも中国各地で発生したチベット族やウィグル族などの民族独立運動を軍隊が鎮圧しているが、これは相手が竹槍や石つぶてで抵抗するだけのものだから、本来は軍隊が出ていくような事案では無く、警察力があればあっさり収まってしまうようなものだ。
翻って中国が軍事面で目標としている米国はどうかと言うと、ベトナム戦争の後だけでも、戦争の場数は無数にある。91年の湾岸戦争、95年のボスニア・ヘルツェゴビナ空爆、01年のアフガン戦争、03年のイラク戦争、その他非常に局地的な空爆とかを数え上げればきりがない。(Wikipediaアメリカの戦争と外交政策:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E6%88%A6%E4%BA%89%E3%81%A8%E5%A4%96%E4%BA%A4%E6%94%BF%E7%AD%96)
特に米国がイラク戦争で世界に見せつけた、人工衛星やコンピューター解析を駆使したピンポイントの空爆力は、中国にとって喉から手が出るほど欲しい軍事技術だ。勿論米国もそのようなシステムを一朝にして手にした訳ではなく、ベトナム戦争以降毎年のように中東や東欧、アフリカや中南米で繰り返してきた戦争である程度の犠牲を払いながら創り上げてきたものだ。米国は戦争の度に、自らが作り上げた新兵器と新システムを展開して実戦の中でその破壊力と正確性の検証を行ってきた。机上の計算や演習などではなく実戦の中でその修正を加え、次の実戦でその修正システムを試し攻撃性の向上に努めてきたのだ。
しかし中国は残念ながらこのような場数を踏めなかった。したがって自分の軍事力がどの程度のものか、ぜひ試してみたい誘惑に駆られているのが今の中国だ。そこで周りの国々を見回して目をつけたのが日本だ。何故日本かと言うと、答えは簡単だ。四つある。
1)日本で民主党が政権を取ってから、米国との同盟に亀裂が生じつつあること。
2)日本の国内政治状況が不安定で、国民の意志が一つにまとまらないこと。
3)日本は「攻撃のための軍事力を持っていない(勿論、核兵器も)」こと。
4)対日本との戦争に関しては、ほぼ全人民の圧倒的な支持が得られること。
以上四つの理由は特にその背景を述べる必要もないくらい、自明であろう。日米同盟の亀裂からいえば、民主党はマニフェストで「対等な日米関係を築く」と言いながら、前首相の鳩山は米国を外して「東アジア共同体」なるものを提起し、アフガン支援のインド洋給油もあっさり取りやめたし、例の沖縄普天間基地問題では突然言い出した県外移設論に固執して日米関係をガタガタにしてしまった。中国が目をつけたのは正にその点で、9月16日にアーミテイジ元国務副長官がいみじくも述べたとおり「昨年来日米関係が冷却化しており、どこまで許されるか試そうとし」(Jijicom:http://www.jiji.com/jc/zc?k=201009/2010091501031)たわけだが、中国側の狙いはそこから更に先に進んで、日本と交戦したら米軍がどこでどの程度の軍事力を出して来るのか見てみようと言うことになりつつある。
日本の政治状況が不安定であることも、中国にとっては好都合だ。「ねじれ国会」の下での与野党の攻防は、国内政局をどう乗り切っていくかに終始し、外交・国防の問題にまで全く手が回っていない。国民の世論についても、民主主義の良いところでもあり悪いところでもあるが、一つの意見にまとまることは決してない。多数の意見に対して、必ず反対の意見もあり、多数で押し切ろうとすると「横暴だ」との横やりが入って、「少数意見も大事にすべきだ」として、中途半端な結論しか導き出せない。中国はそれをよく分かっている。つまり中国が対日戦争を仕掛けても、日本国内輿論は決して主戦論だけに傾くことは無いと見ている。
もう一つは日本の「憲法第九条」だ。戦争放棄を謳っているため、日本の軍隊である自衛隊は日本の防衛にのみ出動するのが建前だ。尖閣列島を日本領土だと言っている日本に百歩譲っても、この地域で戦争になった場合、日本の領海の中では自衛隊は攻撃を仕掛けて来るだろうが、それで終わりだ。憲法の規定から言って自衛隊は日本の領海を超えたところを攻撃してくることは無いし、ましてや中国大陸に存在する中国軍の攻撃拠点、即ち空軍基地やミサイル基地、海軍基地などを攻めて来る可能性はゼロだと、中国は見切っている。つまり中国軍にとってはこんなに都合のよい戦争相手はいない訳で、猫が捕まえたカナブンをしばらく弄ぶようなものだと考えているに違いない。
さらに中国政府及び中国軍部にとって、もっとも重要なことは、統制された全人民の熱狂的な後押しが得られることだ。どの国と戦争をするかシミュレートしたときに、東南アジアの国々やインド、ロシアなどの国とするより、日本と開戦すれば中国全土はどよめくほどに世論が盛り上がる。これは歴史的な背景からして必然的にそうならざるを得ないし、過去数十年にわたって行われてきた反日教育の成果も、この世論作りに大きな影響を発揮する。中国政府・軍部は後顧の憂い無く心おきなく開戦に踏み切れることになる。
中国の“戦争をやりたくて仕方がない症候群”、勿論全面的な戦争でなくていい。中国が自分の現在の軍事力がどの程度のものか検証できればいいわけだ。よしんば途中から米国の第七艦隊が出動してきて、中国側が尖閣列島を奪うことも出来ず、その周辺の軍事的な制海権を確保できなくても、それはそれで良いと考えている節もある。自分の軍事力、軍事システムの限界を認識し、その後の兵器、兵力、作戦、システムの破壊力と精度の向上につなげ、新しく配備するところに持ち込めば良いからだ。既に中国は実際に日本と戦争を起こすことで、軍事力の実証・検証しようとしている。つまり日本は中国政府の中では「仮想敵」などではなく「実戦敵」になっているのだ。
以上の状況から中国政府は日本をさらに挑発しようとしている。日本に「謝罪と賠償」を突き付けたが、これからも要求をエスカレートしてくるだろう。フジタ建設の4人以外にも、現地の駐在員や出張員の日本人を逮捕する口実はいくらでもある。パスポート不携帯だけでも国外退去は可能だ。現地進出企業の法令・規則違反など如何様にも操作でき、操業停止や罰金命令を出せる。中国人労働者に賃上げや待遇改善でストを打たせることも思いのままだ。検査に名を借りた食料品の輸出もすぐにストップ出来る。駐日中国大使の召還や、大使館員の引き上げなども視野に入っているだろうし、更に言えば尖閣列島周辺に中国海軍の艦船を押し出してくることもカードの中に入っている。
このような情勢を眼の前にしながら、民主党政権は一体中国にどう対抗しようとしているのか全く不明だ。また日本の国土を守るための基軸である日米同盟の相手米国にどう向き合おうとしているのか、さっぱり見えてこない。尖閣列島が日本の領土であることを国際的にアピールしていく姿も全く出てこない。
今頃になって官房長官の仙石が「巡視船の修繕費用を払わせる」なんて言い出だすとは! ・・・暗澹たる気持ちになる。
by turusenba
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